2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

3話 古本は紙魚の骨を食べるか -7-

戦慄と恐怖で思考が乱れそうになる。 いや、まだ手はある。 わたしはあきらめない、とあの日心に決めたのだから。 「三ノ宮さん本が置いてあったテーブルはどこ!」 「え、あはいこっちです」 『レナートさん!』 わたしは能力を全開にして最大強度で放つ。 …

3話 古本は紙魚の骨を食べるか -6-

「んじゃ、作戦会議と行きましょうか」 「さくせんかいぎ……ですか?」 無事、文芸部室に避難できたわたしたちは畳(何故か知らないが文芸部室は畳だ)に向かい合って座っている。 三ノ宮さんはきちんと正座というものがができていて、背すじもちゃんと伸びて…

3話 古本は紙魚の骨を食べるか -5-

―――本当に夜の学校は不気味だと思う。 正確にいえば、夜、というほどまだ暗くはないのだが、薄暗い廊下に響く自分達の足音はいつもより大きく聞こえて、不安を煽ってくれる。 とりあえず靴を履き替えに教室へ。 学校指定の革靴でアクションをやるにはどうに…

3話 古本は紙魚の骨を食べるか -4-

「あのう…、どこにむかってるんでしょう?」 前を歩くわたしに『窓際の君』こと――三ノ宮 優羅(自己紹介してくれたのでようやく名前を知った)さんがそう訊いてくる。 「ん?とりあえずこのままだと校舎から一歩も出られないし、反撃するにしても準備が必要で…

3話 古本は紙魚の骨を食べるか -3-

いつものことといえば、まあ何時ものことなのだが。 また厄介なことになったなあ、というのがわたしの正直な感想だ。わたしはとりあえず職員室にむかって歩きながら、鈴華の話を思い出す。 ◆「いいですか空音、今日は結界についてのお話です。ではまず定義か…

3話 古本は紙魚の骨を食べるか -2-

昼休みも半ばを過ぎた。 怒涛のラッシュも過ぎ、人もまばらになった食堂近くの購買で350mlのペットボトルと、かろうじて残っていたと思われるサンドイッチ(少し形のくずれたサーモンフライサンド、見た目も味も値段も微妙)とうぐいすパン(まあうぐいすパン…

3話 古本は紙魚の骨を食べるか -1-

わたし、坂下空音は高校2年生だ。 『高校生2年生である』、ということは、『平日は学校に行く』ということである。 まあ中には学校に行かない高校生もいるとは思うけど。 身近な例を上げると、和真は出席日数は大丈夫かと心配するくらい学校に来ない。 ・・・…