2009-01-01から1年間の記事一覧

 1話 ある日、道端で吸血鬼に -7-

公園。昼間はそれなりに人がいるのかもしれないが、この時間では人影がなくて当然だろう。わたしと和真は住宅街の片隅にある公園にリースさんの跡を追って侵入する。 いた。 彼女は広場の真ん中にひとり佇んでいる。その視線は斜め上を見ているみたいだ。 ジ…

 1話 ある日、道端で吸血鬼に -6-

一直線に帰宅したわたしは挨拶もそこそこに、 部屋から持ち出したこの町の地図をリビングに広げる。 四方に重しを置いて固定する。ついていたTVの音量を下げる。 『おかえりなさい。・・・・・もうみつかったんですか?』 臨戦態勢に入りつつあるわたしを…

 1話 ある日、道端で吸血鬼に -5-

結局、紙袋のままわたしの部屋に放り込むことにした。 リビングが玄関から一番奥にある構造でよかったといえる。 リビングに戻ったわたしはエルクさんに開いている部屋に案内する。わたしの保護者―――いま海外だけど―――が使っていた部屋だ。多少埃くさいが、…

 1話 ある日、道端で吸血鬼に -4-

リビングの扉が開く。 「来たぞ、坂下」 入ってきたのは、緑丘和真。わたしと同い年の少年である。 どことなく陰がある、といえばカッコイイがわたしにいわせれば地味目というだけだろう。 顔はわりといい部類に入るか。 ちなみに同じ学校に通っていたりする…

 1話 ある日、道端で吸血鬼に -3-

玄関の鍵を開ける。 「ただいまー。あ、エルクさんどうぞ」 エルクさんのほうを見る。 「?」 エルクさんはドアの前で立ち止まっていた。 「ソラネ、この結界は―――」 「あ、やっぱりわかるんですか、すごいな」 とわたしが答えていると。 『おかえりなさい、…

 1話 ある日、道端で吸血鬼に -2-

「お断りします」 3秒しか固まらなかったのは自分に花マルをあげたい。 あ、つい反射的に断ってしまったがいいのだろうか・・・・ 「そうか、残念だ」 男は残念がる様子もなくそう答える。 わたしは『それならここで私の餌食になるのだな!』 ぐらいの言葉…

 1話 ある日、道端で吸血鬼に -1-

わたし、坂下空音はよくトラブルに巻き込まれる。 なんでかと言われても困る。 わたしもできればもう少し波のない海を航海したいと思っている。 でも、これはもう仕方ないのだ。人間にはいろんな才能がある。歌が上手かったり、足が速かったり、計算が得意だ…