2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

4話 ハイウェイの澱 -8-

悪霊どもはその人から出て、豚の中に入った。すると豚の群れは崖を下って湖になだれ込み、おぼれ死んだ。(ルカ 8:33) ◆「なんでこう、しつこいんですか、ねっ!」 「知らないわよ、狗だから猟犬よろしく執念深く狙っ、た獲物は逃がさないんじゃない、のっ!…

4話 ハイウェイの澱 -7-

ところで、その辺りの山で豚の大群が餌をあさっていた。汚れた霊どもはイエスに、「豚の中に送り込み、乗り移らせてくれ」と願った。(マルコ:5:11〜12) ◆ 皆さんは『偶然』について考えたことがあるだろうか。 『偶然』は日常のどこにでも転がっている。…

4話 ハイウェイの澱 -6-

そして悪霊どもは、底なしの淵へ行けという命令を自分たちに出さないようにと、イエスに願った。(ルカ:8:31) ◆ さすがに唖然とするわたしを尻目に、優羅とリースさんはなにやら打ち合わせをしている。 「じゃあ、私がアクセルを念動力で押さえてるからそ…

4話 ハイウェイの澱 -5-

そこで、イエスが、「名は何と言うのか」とお尋ねになると、「名はレギオン。大勢だから」と言った。(マルコ:5:9) ◆ 犬、と言ってももちろん、通常の犬では有り得なかった。 まあ、高速道路を走る車に追走できる、という時点で普通の犬なわけはないじゃん…

4話 ハイウェイの澱 -1-

彼は昼も夜も墓場や山で叫んだり、石で自分を打ちたたいたりしていた。(マルコ5:5) ◆『いや、こちらとしてもこのような事態になるとは思わなかった』 変わった電話の相手――三山と名乗った人物は、すまなそうに言った。 先ほどの接触から遠慮がなくなったの…

4話 ハイウェイの澱 -3-

これまでにも度々足枷や鎖で縛られたが、鎖は引きちぎり足枷は砕いてしまい、誰も彼を縛っておくことはできなかったのである。(マルコ:5:4)◆ きょとん、とした。 なぜかというと、前の座席の二人が一斉にこちらを振り向いたからだ。 「あの、二人ともどう…

4話 ハイウェイの澱 -2-

この人は墓場を住まいとしており、もはやだれも、鎖を用いてさえつなぎとめておくことはできなかった。(マルコ:5:3)◆「うーん、首都高で案外時間をとられたのが痛かったわね。ちょっとしか乗らないってのに」 リースさんはハンドルをトントン、と指で叩き…

4話 ハイウェイの澱 -1-

イエスが舟から上がられるとすぐに、汚れた霊に取りつかれた人が墓場からやってきた。(マルコ:5:2) 春の足音が聞こえてくる3月――とはいうものの、外気はまだまだ肌寒い。 もっとも高速道路を走る車の中にいるわたしには、外の気温がどうであろうと関係な…