3話 古本は紙魚の骨を食べるか -5-

―――本当に夜の学校は不気味だと思う。
 正確にいえば、夜、というほどまだ暗くはないのだが、薄暗い廊下に響く自分達の足音はいつもより大きく聞こえて、不安を煽ってくれる。
 とりあえず靴を履き替えに教室へ。
 学校指定の革靴でアクションをやるにはどうにも不安が残るからだ。
 本来ならスカートも履き替えたいところではあったが、流石にそこまではやらなかった。
 三ノ宮さんにも靴替える?と聞いたところ、わたしは体育苦手ですしあんまりかわらないです、と返ってきた。履き替えないと、余計危ない気がするんだけど……まあいいか。
 とりあえず、ここまでは何のこともなくいたって平穏――逆にいえば完全武装している私達こそが異常でおおげさに思えてくる。
 しかし、この校舎から出られないことは純然たる事実だし、さっきの奴が幻覚とは到底思えない。
「―――静かですね」
 三ノ宮さんはボウガンを若干重そうにして持ちながら、小声でわたしに話し掛ける。
「ええ、でも逆に不気味ではあるわね。あれから特に悲鳴も物音も聞こえないし」
「時間が時間ですし、生徒なんてほとんど残ってないんじゃ――」
「生徒、はね」
「あ、先生達―――」
「残業で残っている先生もいるだろうし、そうでなくても用務員さんとかはまだいるはずよ。宿直室はこの校舎内にあるんだしね。現に――ほら、職員室には明かりがついてる」
 わたしは窓の向こう、向かい側校舎1階に見える、電気がついている職員室を視線で示す。
「でも、人影は見えませんね」
「まあこの時間なら残ってる先生も少ないとは思うけど――」
 それとも、もうすでに、ということであろう。
「先輩、やっぱりこのまま図書館に?」
「ええ、行きましょう。うろうろしてるうちに出くわすかとも思ってたんだけどね」
 まあ、それならそれで話は早かったのだ。
先ほどの遭遇で、相手はとりあえず普通の女子高校生(この場合はわたしのことだ)でも反応できそうなスピードで動いていた。
 経験や鈴華から聞いた話からすると、世の中には人の目で追えない動きをする化物もいるのようなのであれはまだましな部類だ。多分。
 たしかに動き自体は変則的(なんだあのジャンプ力)で、姿形も一般的な動物とかけ離れていたが――逆にいえば、それだけだ。
 姿形に惑わされ、足でもすくまない限り、普通の動物を相手にするのとそんなに変わらない。
 むしろ飢えた野犬の群れを相手にするほうが危険度は高いかもしれない。
 攻撃力も壁に爪痕を軽くつける程度では野生の熊とそこまで変わりはしまい。
むしろ熊より力は弱いんじゃないかな。
 とはいうものの、それぐらいでも普通の女子高生2人が殺されるには十分なのだけれど。
「とりあえず、なるべく静かに図書館前の廊下まで行きましょう」
 三ノ宮さんが頷くのを確認し、わたしたちは図書館へ――遠くから、複数の物が崩れるような音が、廊下の空気を伝わってわたしたちの耳に届いた。
「今の――どこからかわかる?」
「下の階からみたいですけど――」
 わたしの問いに、三ノ宮さんはそう答え、少しだけ逡巡したあと。
「先輩、私ちょっと行ってきます―――」
 階段にむかって走り出した。
「ちょ――」
 実は直情系の性格だったりする?行動が速い。そして迷いがない――というよりは何か気になることでもあるのか。
 本当はこの間に図書室に侵入するべきなのだろうが、放っておくわけにもいかない。
 わたしもなるべく足音を殺しつつ、彼女の後を追った。

                       ◆

 一階に下りると、今度は断続的に激しい物音が響いてくる。ん?音に混じって、――音楽だろうか?リズムのある旋律もかすかに聞こえてくる。
 その音に誘導されるように先を急ぐ三ノ宮さんを追ってわたしは廊下を警戒しながら進む。この方向って―――わたしが廊下を曲がろうとしたところで、一段と大きな音がし、それきり静かになる。音楽も止まった。
 そちらの方向を見ると、沈黙の帳が落ちた廊下には、一箇所だけ明るくなっている部分があった。
 開いたドアから光が漏れ出しているのだ。廊下の床を切り取るようにぼんやりとあかるいその光を出している部屋は、さっき向こう側の校舎から見えた唯一明かりが灯っていた職員室だった。
 職員室手前で立ち止まっている三ノ宮さんに追いつくと、先に行く、と視線と手で合図を送る。
 それは彼女に通じたようで神妙に頷いた。
そろそろと入り口のドアに近づき、中のようすを伺う。
―――ひどい有様だった。
 ペン類や紙類、教科書、湯呑み等は床に散乱し、大きく割れた花瓶から漏れ出した水が大きく床をぬらしている。水机は斜めを向いていたり、椅子に至ってはひっくり帰っているものまである。
そして、これだけの狂態を晒しているのに関わらず、入り口から見渡すかぎり、誰もいない。
 わたしは、サバイバルナイフを鞘から抜き出すと、重さを確かめるように手に握ると職員室内に侵入した。
 ナイフはまあ扱ったことがないというわけでもないのだが、人外相手にどこまで通用するか。第一刺さるんだろうか。いやまあ見た限りではあまり丈夫そうな印象のやつではなかったので大丈夫だろうけど。
 それにこう見えても刃物はあんまり好きじゃない。
それはともかく――いない。物音ひとつしない。……おかしいな。ついさっきまでは。奴がいないはずはないのだが――ゆっくりと歩みを進め、部屋を見渡せる位置を確保すると、すばやく視線を走らせる。やはり何もいない。
 と、入り口からひょっこり顔を出し、室内の様子に顔をしかめながらも、こちらを伺っている三ノ宮さんが見えた。
 死角になっている部分をチェックしようと、こちらに来ようとする三ノ宮さんを手で制し、わたしは慎重に室内を確かめる。
結果。
 いない、結局職員室には誰一人としていなかった。
「うーん……」
 警戒を解き、わたしは考え込む。おかしい。あきらかに変だ。ここに奴がいないのはまだいい。
 でも、なんでこれだけ争った痕跡があって、血痕がひとつもないのだろう?
 先生の私物なのだろうか、わたしはなにか強い力で破壊され、床にバラバラに散らばってだらんと中の機械を垂らしているちょっと古い型のCDプレイヤー付きステレオを見つめながら思索を進める。
 まさかとは思うが実体じゃなくて幻覚………?いや、壁に爪痕はたしかについていたし、この室内の荒れようは人間がやったにしてはひどすぎる。
「……うーん」
 三ノ宮さんは荒れた職員室内を物色している。物色という言い方は悪いけど、今はお茶缶の蓋を開ける必要性は0に思えたのであえて物色という言葉を使おう。
……いやもういいけど。
「……誰もいないですね。あれ、難しい顔してなにかお悩みごとですか?先輩?」
 三ノ宮さんトコトコこちらに近づいてくるとそう話し掛けてくる。
「……なんで血痕のひとつもないのかと思って」
 わたしは正直に答える。予想されるのは血すら残らない方法で――しかしあの姿形でそんなような能力を持っているとは――目撃者である三ノ宮さんは現に食べられたと言ってるんだし。
「?そりゃないと思いますけど?」
 不思議そうな顔をしている三ノ宮さんの顔をわたしは凝視する。
なにをそう当たり前のことのようにオッシャッテルンデスカ?
「ちょっと待って、たしかあなた食べられたって言わなかった?それなら血の後がべったり残っててもおかしくないはず――」
「いえ、ですから頭から丸呑みにされたって言ったじゃないですか」
 人の話はちゃんと聞いて下さいねーなどとでも言いたげな三ノ宮さん。 
 ちょっとまてまさか――
「ええっと…それは比喩表現じゃなくて?」
「はい、こう口をありえないくらいにあぱーんと」
 三ノ宮さんは両手で口の開き具合を表現する。その仕草が可愛かった…ってそんなこと思ってる場合じゃなかった。
 まいったな……そこまで非現実的(学校に閉じ込められているこの状態でいまさらという話はあるけれど)だったとは……と、なると逆説的に犠牲者が助けられる可能性が出てきてしまった。
 非現実的な事象には非現実的な解決が用意されているのがこの世の真理……である場合が多い。いや、ま、予測にすぎないんだけど。
 思考を断ち切るとわたしは息を吐いて気合を入れなおす。
「ま、ここで考え込んでいても仕方ないわね。さっさと図書館に行きましょう」
「了解であります」
 軽快に敬礼などする三ノ宮さんに軽い頭痛を覚えながら、わたしたちは職員室を後にした。

                       ◆

 なるべく息を潜めながら廊下を歩き、図書館の真下の階段までやってきた。
 これまで何者とも遭遇はなし。人の気配すらしない。やっぱりもう、人は――
階段の上の方からテンポの速い足音が聞こえてきた。足音は静かな校舎に反響してよく響く。つまり、誰かが上から降りてくるのだ。
 わたしは三ノ宮さんと顔を見合わせ、壁に張り付くように指示する。
まあ足音がするということは人間だろうとは思うけど、もしかしたら追いかけられているのかもしれないので警戒するに越したことはない。
 階段を走って降りてきたその人影に、タイミングよく声をかける。
「こんばんわ」
 ……もうすこしなんか気が利いたセリフはないのかと自分で思わないでもなかったけど、まあ時間的にはこんばんわだろう。
 階段を降りてきた彼女――そう女性徒だ――はビクッと身をすくませた。
 ギギギと音でもなりそうな動作で首をこちらのほうに向け、安堵――そしてわたしたちをよく観察して驚きに目を見開く。
……まあ普通の反応だよなあ。
「あ、あなたたち何してるの…?」
「先輩こそ……こんな時間にどうかされたんですか?」
 リボンで3年生と判別したわたしは余裕のある声色でにこやかにそう聞いてみる。
我ながら性質が悪い。何も彼女の後ろから来ないことを確かめてからの発言だったが。おかしいな……アレがきていると思ったのに。
「何って……今から帰るところに決まってるじゃない」
 ん?その先輩の喋った内容と様子にすごいひっかかった。何か隠してる?
 ってことはつまり――まあ、その前にわたしたちの格好にツッコミはないんですか?とも思ったが、かなり何かに怯えている様子で、声も震えているので仕方ないのかもしれない。
 まあその、現実を受け入れられないのはもっともな話なんだけど……
「ええっと……その残念ですけど帰れないと思いますよ?」
「――え?」
「ドア、開きませんから」
 そう言ってわたしはすぐそばの非常口を指差す。
「なに、馬鹿なこと言って――」
 廊下は薄暗いが、鍵が開いているというのはこの距離ならば見て取れる。
そう言って先輩はノブを回して――もちろん開かない。開いたら私は速攻で帰る。
「嘘――」
「ええっと窓も他のところもそうなんですよね……鍵は開いているのに開かないんですよね……要するにこの校舎に閉じ込められているみたいなんですよね」
わたしはつとめて明るい口調で言う。
「嘘――」
 先輩はガタガタと震えて、手近な窓にとりつくと鍵をガチャガチャいわせて一所懸命に窓をあけようとしている。
 先輩、と袖をひっぱられて耳元にささやく声。
 なに?と小声で返す。
「図書室にいた3人のうちのお一人です」
 厳しい目で彼女を見つめる三ノ宮さんに
「あ、やっぱり?」
と返すわたし。
「なんで、なんで開かないのよ……!あの化け物は夢じゃないっていうの……そんなの……ありえない」
 大声を出して叫ぶ先輩。取り乱す気持ちはわかるけど……
「あの化け物というのは何ですか先輩?」
 わたしは追い討ちをかける。
「――っそれは」
 ビクリと身をすくませ言いよどむ先輩。その顔には恐怖と不安と驚愕が混じっている。そして、わたしたちを再度観察してそれは不審に代わった。
「あなたたちなんでそんなの持ってるのよ……」
 わたしたちから怯えるように後じさる先輩。うんまあ仕方のない反応だと思う。
「ああそれは、たぶんその化け物に遭遇したからですよ?」
 にこやかに微笑んでわたしは答える。われながら意地が悪い。
「……冗談でしょ?あれは夢の――」
「これが夢だったら、わたしも早く目が覚めたいところです」
「……おかしいわよ……なんであんなのに出遭ってあんたたち生きてるのよ!そんなのありえない!」
 声を絞り出すようにして大声を出す先輩。
むか。人が必死で逃げたのに……というかだいたいあなた達が事態の原因じゃないんですか?
「あのですね先輩、あんなもの喚びだしておいて――」
「先輩」
 さすがに文句のひとつも言ってやろうと思って声を上げかけたところで、三ノ宮さんの真剣な声音に意識をそちらに戻す。
「―――来ました」
 振り向くと、50mほど離れた廊下の中央に、いつのまにか現われたこの事態の現況であると思われる青白い肌の鬼が、いびつな四肢を従え、こちらにその不吉な顔を晒していた。

                        ◆

 距離が非常に微妙だ。彼我の距離は50m。
 見通しのいい廊下だから相手がよく見える。
 鬼とわたしたちの間に緊張が走る――いや、緊張を感じているのはわたしたちだけか。どうする?この距離なら逃げられるような気がするが――。うしろに視線をやる。先輩はガタガタと震えながら50m先の鬼を凝視している。
 彼女を連れて逃げ切れる自信がない。見捨てる――というのはなんというかあくどい選択肢なので頭の片隅に留めておくだけにする。よって――迎え撃つしかない。
―――と、唐突に鬼が動いた。
 ねじくれた四肢を器用に動かし、こちらに襲い掛かってくる。
とりあえず、やるだけやってみるか。
 わたしは鞘からナイフを抜き放つ。
 と、傍らで三ノ宮さんがしゃがむのを視界の端でとらえた。
 彼女は危なげない動作で廊下に膝をついて慎重に狙いを定めている。
「撃ちます」
 彼女は自分に言い聞かせるようにしてトリガーを引く。
ヒュン、と風切り音とともに矢は黒い影になって発射された。
 彼女の狙いは正確だった。しかし、矢は当たらずに、鬼のいた空間を通過する。
なぜなら、矢が到達する前に鬼は跳躍し、横の壁にしがみついたからだ。
 掲示板――緑色の柔らかい材質のアレだ――に爪を食い込ませ、その他の足で掲示板の枠に器用にしがみついた鬼は、一瞬の溜めの後にこちらにむかって跳躍する。
と、冷静に解説している場合じゃなかった。
 わたしは三ノ宮さんをかばうように前に出て、ナイフを片手で構える。
 多少意表をつかれたが、その跳躍は計算の範囲内!
 カウンタ―気味にナイフを入れてやろうと、待ち構えるわたしをナナメに通り過ぎて、鬼はわたしの横の壁に取り付くって―――まずっ!
 慌てて体を捻ってそちらにナイフを差し出した瞬間、鬼の爪とわたしのナイフが交差する。っ!危うく吹き飛ばされそうになるのをなんとか踏ん張って耐える。
 ヒュー、という耳慣れない音が耳に入ってくる。
 何の音だろう、と思考する間もなくそれが鬼の口から漏れ出ている音だということに気づいた。
 うう、間近で見るとやっぱりインパクトある顔……目の部分には真っ黒い穴が開いており、その中は底が無いようにただ暗い。ざんばらに顔にかかっている髪がよりいっそう不気味さを感じさせる。
 などと悠長に思う間もなく鬼はこちらを押さえつけようとする。両腕でこちらを押さえ込もうとするのをなんとか体をくねらせてかわす。(この間にも片方の手は鬼の爪と交錯中だ)
 しかしそのうち、片方の手が私の肩を掴み――しかしその手は一瞬で離れ、鬼の顔の横に添えられた、と思った一瞬後、その手にブスリと突如矢が突き立った。一呼吸、間が空いて鬼の口から悲鳴が漏れ出る。
 どうやら痛覚はあるらしい。
 わたしはその隙に全力で足を前に蹴りだし、鬼を向こうへ蹴飛ばす。ん?思ったよりめちゃくちゃ体重軽いぞこいつ。
 わたしの蹴りで数メートル吹っ飛んだ鬼は、すぐさま起き上がり、手から矢をわずらわしげに抜き、一度後方に跳躍すると、こちらを睨みつける。
「ありがと」
「いえ、どういたしましてです」
 わたしは至近距離から再び矢をぶち込んでくれた三ノ宮さんにお礼を言う。
 頼りになりすぎるぞ後輩。頭に刺さってりゃ終わってたかもしれない、惜しい。
というかいくらあーいう姿形してるからって容赦なく撃てるのはすごいぞ。
 再び距離が離れ、わたしたちは向かい合う。さきほどと違い今度は10mほど。鬼の跳躍力なら一気に飛びかかれる距離だ。
 鬼もわたしたちを警戒してか、すぐさま飛び掛ってはこない。
 緊張した時間が流れる。
 その緊張を打ち破ったのは、わたしが存在を忘れていた3年生の先輩だった。
「イ、イヤァァァァ!もうイヤ、イヤよこんなのっ!」
 そう叫ぶと、階段を登って上へ走って行く音がする。
一瞬でもそちらに気を取られたのが不味かったのか。
『そこか――』
 鬼の叫び声。意志のある叫びはわたしの能力で自動的に変換される。
その叫び声に一瞬気をとられる。どういう――?
 気が付いた時には鬼が、こちらにむけて疾走をはじめていた。
「しまっ――」
 た、と思った瞬間鬼が視界から消える。また壁に、と視線を巡らせるも、上下左右どこにも―――次の瞬間気づいてぞっとする。
さらに鬼の咆哮がわたしの耳朶を打つ。
『そっちだめ――』
 まずい後ろを取られ――と思い振り向いても鬼の姿はなかった。
「――?」
「先輩あいつ階段――」
 げ、まずい!と思うと共に冷静な自分が同時に疑問を叫び出す。
『なんで?』と。
 なんでわたしたちを狙わずにあっちに行った?
 さらに地の底から響くような鬼の叫び声。
わたしの能力で叫び声の意味が流れ込んでくる。
『まもる――』
「先輩はやく追いかけないと!」
 この子はやっぱり良い子だ。多分間に合わないと分かっているだろうに。
でもまあ、追いかけないわけにはいかない。
 案の定、わたしたちが階段を踊り場まで上がったところで、聞こえていた悲鳴は途絶えた。声が途絶えたことに立ちすくみ、さらに先を急ごうとする三ノ宮さんをわたしは肩を掴んで止める。
「一旦引くよ」
わたしは冷静にそう言う。
「でも!」
 わたしは努めて小声で、しかし強い口調で話し掛ける。
「いいから、だいたい仕組みはわかった気がするし。どうせこのままじゃ勝てないと思う。いい、なるべく静かにこの場から離れるよ。―――忍び足は得意なんでしょ?四の五の言わずについてきなさい」
 わたしの表情と口調に気圧されたのか、三ノ宮さんは黙って頷いた。
 
さてさて―――予想が合っていればいいんだけど。